栁良一税理士事務所

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病院マーケティングサミット2018 概要

病院マーケティングサミット

日時:2018年3月25日

場所:アクロス福岡

 

○総論

現場では質の高い医療及び医療人教育を行っているが、病院外からの認知や評価はそれほど高くない場合がある。そのような病院の取り組みと、外部からの評価とのギャップを埋めるためには病院の広報力が求められる。

情報を伝える上で、どのような取り組みが必要なのか、病院関係者、一般企業の様々な立場の方々がセッションを行った。

 

Session1 小倉記念病院の取り組み

○病院概要

・小倉記念病院は658床。

・広報の取り組みとして、病院HP・広報誌・Facebook・YouTube・インスタグラム・市民公開講座などを行っている。

 

○広報活動上の工夫

・小倉記念病院のHPのアクセス解析では、ドクターの紹介ページが多く見られていた。そこで、ドクターの紹介を、YouTubeを利用して動画で紹介した。その結果、HPの滞在時間が伸びた。

・広報誌は、12ページで、年4回発行。ぱっと手にとって読んで、すぐ捨てられるという前提で作っている。表紙は、何の広報誌かぱっと見ではわからないようなものになっており、中身も短い原稿で、情報は載せすぎないようにしている。QRコードを掲載することで、特集した疾患や担当ドクターの動画に誘導できるようにしている。広報誌の送付先は、特定地域(北九州周辺)のすべての医療機関に送付している。

・市民公開講座のチラシは、北九州の市民センターや老人クラブに送付している。公開講座の開場から開始時間までの時間の有効活用として、開場後にスクリーンに病院の紹介動画などを流すことでPRしている。

・地元企業とコラボレーションしたオリジナル商品を開発し、挨拶回りの際などに、持参している。

 

○広報活動の運営体制について

・できれば、専従の広報担当者がいたほうが良い。広報のコンセプトなどは、内部で作って、具体的なホームページ、広報誌などの制作物は外部のプロに委託している。

・各診療科が独自の広報をしだすと、病院全体のブランディングが難しくなるので、広報課が全体を管理する。広報専任のスタッフがいても、リソースには限りがあるので、制作物等を作る際のコンテンツなどは、各診療科との役割分担は必要。

 

○外部業者の選び方について

・アドベンコーポレーションの青野高広氏にHPや広報誌、市民公開講座のチラシ等の作成等に協力してもらっている。

・チラシを作る際は、情報を詰め込みすぎないようにしている。シンプルでわかりやすくメインターゲットに刺さるようなデザイン心がけている。

 

 

Session2 東北大学病院の広報誌作成術

○病院概要

外来数:300名、病床数:1200床の特定機能病院

 

○広報誌作成の背景

・東日本大震災が契機になり、地域社会の人々に情報を適切に伝えると共に、地域社会からの声を取り入れることが目的。大学病院なので、診療・研究・教育を行っており、患者様からは、自分の体を研究・教育に使われてしまうというネガティブなイメージもある。そういうイメージを払拭していきたい。

 

○広報部の組織体制

組織は事務部の中に位置するのではなく、病院長直下に広報部を置き、ある程度の権限と裁量を持った仕事ができている。

 

○広報誌のメリット

紙媒体の広報誌はコンテツやデザインなど自由度が高いツールである。自分たちの伝えたい世界観を適切に伝えられる。

年4回 1万部発行している。16P 特集8ページ、病院や医師の紹介、コラムなどを掲載。

 

○広報誌の工夫

・半分は、当院の情報、もう半分は、患者様が興味を持ちそうな情報(あえて載せる必要のない情報)。特集は、特定疾患にかかるものになるが、幅広い人に関心もてるような内容を載せる。広報誌は外注するが、広報担当は、つたえたい情報に関して、組織的な、歴史的な背景等を踏まえた上で、デザイナーに伝える役割を担っている。

 

 

Session3 「アサデス_KBC テレビ特集はこうして作られる」

○番組概要

九州朝日放送で、朝のローカル情報番組を制作している。医療・健康に関する企画数は、月に3~5本程度。週に1本ぐらいは医療に関する企画が放送される。

 

○医療企画の分類

企画の分類としては、①有名人の罹患事件、②最新治療、③流行トレンド(熱中症・インフル)、④医療制度などがある。

視聴者の関心の期間が非常に短くなっているので、速報性の高い情報が必要になる。

 

○テレビの役割

映像により、文字だけでは伝わらない、人の表情、声、切実な思いなどを、単なる情報ではなくストーリーとして伝えることができる。

医療特集を行うときは、医療機関に取材に行くこともあるので、TVディレクターと医療期間との関係づくりが大切だと考えている。

 

 

Session4 セールスフォースドットコムのマーケティングオートメーション

○会社概要

マーケティング支援ソフトを提供している米国資本の会社。

 

○ツールでできること

・大規模病院・中規模病院の集患に関しては、小規模クリニックからの紹介をもらうかが重要になってきている。医療機関ごとの、患者の紹介数、スコアリング、グレーディングなどを個別に管理することができる。

・セールフォースのプラットフォームを使って、業務効率化のためのアプリケーション開発なども可能。

 

Session5 パネルディスカッション「生き残るための病院マーケティング戦略」

○デザイン会社の選び方

・良いデザイン会社は、企画提案をしてくれる。

・デザイナーとの相性が大切なので、ある程度いろんなデザイン会社を使ってみて、相性の合うところと長く付き合うようにすると良い。

・長く付き合うメリットとして、病院の内情もある程度わかっているので、毎回同じような説明をすることなく、スムーズに仕事を進めることができる。

・制作物の作成責任と、その結果や反応がどうだったかも確認してくれるデザイナーはしんらいがおける。

 

○マーケティングの効果想定

・ブランディングなどは、すぐに外来数などに反映されるわけではなく、長期間を有するので、効果測定は難しい部分はあるが、HPのアクセス数や市民公開講座の集客数など、定量的なデータが取れるものに関しては、把握するようにしている。

 

○テレビで取り上げてもらう方法

・プレスリリースを番組宛てに送ってもらうのが一番良い。ただし、番組で企画化できるかは別問題なので、そのプレスリリースが視聴者に取ってどのような価値があるのかを、わかりやすく書いてもらえると有り難い。最新医療の情報などは、難解なものも多いので、素人が読んでも理解できるようにプレスリリースを流すことが大切。

 

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Session6 ユーザー行動を変える病院WEBサイトの作り方

・スマホにも最適化されたHPにすべき。

・検索行動として、以前は「地域 + 診療科」でヒットすればよかったが、最近では、「胸が痛い」、「心臓 痛い」など症状を文章で検索される傾向があり、また検索ボリュームも多いのでそれを踏まえた上で、SEO対策が必要。

・今後HPがしっかりしていないと、選ばれない可能性がある。

・HPに掲載するコンテンツの質×量が大切であり、集患のためにも患者目線の情報や、求人の直接応募増加のためにも医療職目線の情報を発信していく。

・できれば、月に4回程度はHPの更新し、情報発信を行うことが望ましい。

 

 

Session7 行動変容の仕掛け方

・一般企業では当然に行われているマーケティングやブランディングなどの手法が、医療業界ではそれほど行われていない。今までは、それでも経営できていたが、今後は医療機関でもそういった視点が大切になってくる。

・ソーシャルマーケティングの手法は、社会とのかかわりを大切にするマーケティングの考え方で、社会の利益を追求するマーケティング手法である。

・行動経済学で、ナッジ(Nudge)という考え方がある。科学的分析に基づいて、人間に『正しい行動』をとらせようとすることである。人間は必ずしも合理的な行動をするわけではなく、感情が動かなければ行動を変えられない。正しい行動を促すために、適切な情報発信やコミュニケーションが必要である。

 

 

Session8 オリンパス「経営ビジョンの伝え方」

・広告には、商品広告と企業広告がある。商品広告は、特定商品を売るための広告だが、企業広告は、広く会社を知ってもらうために、会社を取り巻くステークホルダー(株主、従業員、取引先、地域社会など)に情報を発信する目的で行っている。

・オリンパスの経営ビジョンは、「世界の人々の健康(医療技術)・安心(工業用内視鏡)と心の豊かさ(写真映像技術)の実現をとして社会に貢献する。」というものである。広告では、経営ビジョンを「ココロとカラダ にんげんのぜんぶ オリンパス」というメッセージにして伝えている。

・コミュニケーションは、受けてのためにある。送り手(会社)が受け手に何を伝えたいのか、どのように伝えるのか、どうすれば伝わるかを考えることが大切。

 

 

Session9 ライフネット「愛されるブランドの作り方」

・インターネットを使って生命保険を販売している。

・ブランドとは、企業と生活者との間に持続性のある心地よい関係が確立された状態をいる。

・愛されるブランドになるために、①理念がある、②顔が見える、③正直である、④NoとWhyできないこと、なぜできないのかをきちんと説明することを意識して取り組んでいる。

・当初の広告活動は、商品広告を全面に押し出したものであったが、ネットの新興企業だったこともあり、企業や商品自体の信頼関係がなかったため、うまくいかなかった。

・広告戦略を見直し、社内で働いている人を売り、会社自体を売り、商品を売るという方針転換行なった。社員が自らブログを書いたり、経営者が書籍を出版したりメディアに頻繁に露出したりすることで認知度や信頼性を高めていった。

 

 

Session10 横浜DeNAベイスターズ「熱狂的ファンの作り方」

・主な収入源は、チケットと放映権、企業広告、スタジアムの看板、グッズ販売などで、黒字経営できている。魅力的な強いチームと強固な事業体制により、観客動員の増加、球団収支の改善してきた。

・当初は、球団経営に必要なデータが何もなく、スタジアムに来ている観客データすらない状態だったが、徹底的にデータを収集し、球団経営の方向性を決めていった。

・コミュニティボールパーク化構想を掲げ、スタジアムは憩いの場所として、野球を見ながら、お酒を飲んで、話して、楽しめるようにしている。野球好きだけをターゲットにすると、集客は困難なので、野球以外も楽しめるように、イベントなども実施している。

・横浜という地域のもつブランドにシンクロするような、球団ブランドを考えており、目指すべきブランドは、「海と港、横浜のおしゃれでかっこいいボールパークとチーム」としている。

・地域とともに歩む姿勢が大切。

 

 

Session11 パネルディスカッション「経営に生きるブランディング戦略」

・ブランディングのための効果測定指標は、なにか明確な指標があるわけではないので、自分でオリジナルの指標を作らなければならない。

・病院も地場産業であり、地域とのコラボも大切。職員も病院のファンとして位置づける。

・人を売る方法として、ライフネットは、社員全員が広報マンという意識付けをさせて、ブログを書かせている。自ら発信していく組織文化。炎上などが起きないように、ソーシャルメディアの作法に関しては研修を実施している。

・ブランドづくりのためには、持続性のある取り組みが必要であり、そのためには、経営のコミットメントが大切。経営層と現場の担当のコミュニケーションを密に行う。

・ブランドは経営戦略そのもの。どのように横浜に根付くかを大切に考えている。

・ブランドが売上に直結、企業の継続性のために必要不可欠。法人の人格としてどうありたいかを明確にする

・ブランドは約束である。企業活動を通じて社会に提供したいものを市場なり、お客様が信頼してくれている状態を作る。

・経営のビジョンや理念はブランドづくりのスタートライン

 

 

Session12 医療職・従業員をファンにするWebコミュニケーション

・不十分な情報発信では、病院が過小評価されてしまう。

・病院の広報は行き当たりばったりになりがちなので、きちんとPDCAを回すことが大切。

・事前に、誰が、どのような内容のコンテンツを、いつ発信するのか、年間計画を立てて実行していく。

・人材会社を通して求人を行うと、広告費や仲介料金が多額になるので、HPからの直接応募ができるような体制に持っていく。そのために、働きたいと思わせるような情報(実際働いている人の声や教育体制など)を発信してくことも大切。

・SNSは情報拡散のツールなので、それぞれのツールに合わせて、使い分けが必要。Facebookは閉じたコミュニティなので、求人募集などに向いている。

・情報発信は、文字だけでなく人の写真を入れることが効果的。

 

 

Session13 電通九州「人を動かすコミュニケーション設計」

・CM見た→HP見る→申し込む等の全体を設計して、PDCAを回す。メディアのコンタクトポイント、効果測定を考えながらコミュニケーション設計を行う。

・検索ボリュームが多いキーワードでヒットするHP作り。

・ターゲットごとにコミュニケーション方法を変える

・スマホでどのように見られるのかが大切

・HPの作り方として、グローバルナビゲーションにうまく詰め込む→ドロップダウンで選択できるというトレンドで、フラットデザインが好まれる。

・ユーザーは、「認知→関心→比較検討→決定→再訪」という行動を取るので、ユーザー視点で度のタイミングでどのような情報を提供するのか、ターゲットが理解できる言葉で表現する。

・WEBでは、医療機関から情報発信は信頼性が高いので追い風。

・知られるための活動は行っているか。

・誰に、何を伝えるかターゲットの明確化が必要。

・選ばれるための伝え方はできているか。ターゲットからの理解とデザインが必要。

・WEB×コミュニケーション×設計の思想を持つ

 

 

Session14 LINEを活用したマーケティングの成功例

・LINE@というビジネスアカウントを作成し、メールマガジンのような情報発信が可能。

・新患を取るというより、リピート向けのツールとして使える。

・情報発信の頻度は月に2~4回が適当。

・メールで情報発信するより、LINEのほうが読まれやすい傾向にある。

 

 

Session15 ヤフー「コンテンツターゲティングのススメ」

・どんなに有益なコンテンツを作っても、それがユーザーに適切に届けなければ意味がない。

・コンテンツを届ける方法として、Yahooコンテンツディスカバリーという広告がある。コンテンツを届けたいターゲットに、的確に届けることが可能である。

・良いコンテンツとは、ユーザーに取ってGiveがあるコンテンツである。Giveがあるとは、役立つ、楽しめる、新しい発見情報である。

・コンテンツを作る際は、誰に対してGiveのある情報なのかを、徹底的にターゲットを明確化しなければならない。明確化した分、伝わる人の数は減るが、内容の濃い情報となり、行動を促しやすい。コンテンツをニッチにするほど、信頼性が上がる。

・情報の受け手が、自分のためのものだと、「自分ごと化」として感じられるようなコンテンツ作りをする。

 

 

Session16 パネルディスカッション「病院のためのWebコミュニケーション」

・人が大切。誰が、誰に、何を(コンテンツ)、どのように伝えるか(tool)・どのような人にどのような行動を促したいのかを明確にする。

・自分のために、自分の必要不可欠な情報、欲しかった情報を提供する。

・現状をどう思われているか、どう思われたいのか、そのギャップをどう埋めるために何が必要なのか考える。

 

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